啓発活動
■支援員配置事業
大船渡や釜石、大槌町のように、支援員の配置事業の導入を支援しました。
震災から2年近く経とうとしている今、生活の保障のないボランティアでは続きません。『陸前高田市仮設住宅連絡会』として、住民の寄り添った支援や仮設自治会同士の連携を進めるためには、継続的に動ける人材を確保することが必要です。そして、そのために資金を確保しなければなりません。資金を確保するため、行政との交渉や助成金申請の代行を行ったり、人事の募集等、行いました。
同じ岩手県でも大船渡や釜石、大槌町では仮設住宅に約100名の支援員が配置されていました。
住民は相談相手もなく、復興計画や生活に関するさまざまな情報の取得力の格差も大きい状況です。
集会所を管理する人材も不足しているため、陸前高田は他の地域と比べると集会所が活用し切れていないような状況が続いていました。
支援員を配置することで、住民にとっては心の拠り所ができ、自治会長さんたちの負担を減らすことができます。
本来行政が行うことを、被災した住民中心で行うことで、被災者に寄り添った支援ができると考えています。
『陸前高田市仮設住宅連絡会』で実施した事業です。
●当時の陸前高田の状況とやるべきこと
陸前高田で『仮設住宅自治会長親睦会』を開催するにあたっては、郵送の案内のほか、出欠をとるため電話をしました。電話からも充分崖っぷち状態だということが伝わってきます。その後、全ての自治会長宅を訪問し、お話を伺った結果、他の地域の会長さんたちよりもずっとずっと大変そうだということがわかりました。皆さん、1時間でも2時間でもお話をします。これまで愚痴を言う相手すらいなかったのだということをしみじみ感じました。結局全ての会長宅の訪問が終わるまでには足掛け2ヶ月掛かりました。また、孤独を防ぐ目的で始めた『一緒にごはん!プロジェクト』を通して、住民とも親しくなり、多くの方からお話を伺いました。復興計画についても、何がどう進んでいるのか、自分たちは一体いつ仮設から出られるのか、住民は先の見えない不安からフラストレーションを抱えていました。夜眠れない、朝体を起こせない、そういった住民はまだまだ沢山います。精神的に崖っぷち状態の方が沢山いらっしゃったのです。しかし、一部の仮設住宅を除いては、住民の世話役は自治会長さんしかいません。仮設住宅の代表者のほとんどが自営業者です。失業手当が出ないどころか、震災前から事業資金の借り入れが残っている方も多く、その上若い人ならば、住宅ローンまで残っています。失業手当をもらっている雇用されていた方々よりも自身の生活再建を急ぐ必要があり、更にリーダとしての役割をいくつも担っているケースが多いのです。ですから自治会長さんだけでそういった住民の課題に対応するのは、到底不可能なことです。それでも中には円滑に運営されている仮設住宅の自治会もありました。その仮設住宅に特化した支援団体を立ち上げ、助成金を取り、何人もスタッフを雇用し、運営しています。ノウハウを知っているリーダがいるところと、そうでないところの格差は非常に大きく、それにより住民が受ける恩恵の差も大きいのです。全ての地域に支援が行き届くようにするためには、やはりそれなりの体制を作らなければなりません。そのために、まず、『陸前高田市仮設住宅連絡会』を立ち上げ自治会長さんたちが繋がり、課題を共有することができました。次は、仮設同士、地域同士が連携を取れる体制をつくることです。仮設同士、地域同士が連携を取るためには、忙しすぎる自治会長さんたち以外にも、実行部隊としての人材を確保することが必要です。リーダとしての役割を担った自治会長たちの力を活かすためには、自治会長以外の実行部隊を作ることが必須なのです。
事業の目的
仮設住宅同士、住民同士の情報格差と支援の格差を是正し、仮設住宅住民に対しての支援の充実を図ることを目的とする。
陸前高田市の仮設住宅入居者に対する課題
【仮設住宅自治会代表者に対する過大負担に対する疲弊】
陸前高田では、情報共有する仕組みがないことから仮設ごとの支援格差も大きく、仮設住宅の代表者一人にかかる負担が大きいことから、多くの代表者が精神的にも体力的にも疲弊している状況である。代表者は比較的年配者が多いこともありITリテラシーが必ずしも高いとはいえず、情報入手力の格差は大きい。そういった格差を埋め、自治会同士が助け合える関係をつくるため、住民同士、あるいは仮設住宅の代表者同士が情報を共有する仕組みが求められている。
【情報不足による行政と市民の溝】
被災地域では震災以前から行政依存が高い地域が多い。にもかかわらず、行政の職員も多くが津波で亡くなり、加えて仕事量は震災前の10倍といっても過言ではない。 こうした状況の中では、住民の意見を吸い上げたり、住民と情報を共有したりすることが困難となっている。住民側は必要な情報を十分得ることができず、先の見えない不安からフラストレーションを溜め、最悪は精神を病む者も少なくない。更に復興計画等の説明会を開催しても、会場まで出向けない、行っても話しが理解できないから行かない等で実際の参加者は少ない。また、広報誌などを読んでもわけがわからない、字が小さすぎて読めない、という住民も少なくない。こういったことから市民は行政に対する不信感を募らせ、行政と市民の溝はますます深まるばかりに見える。
【支援すべき生活弱者の情報不足】
陸前高田市では、震災前は母子家庭に対し民生委員が何らかの支援をしていたが、震災後誰がどこにいるのかわからなくなり、支援ができない状況が続いている。市に問い合わせしたところ、市では手当てを申請している家庭しか把握しておらず、実際には手当ての対象外の母子家庭も多いが、世帯数等は把握していないという回答だった。陸前高田だけでなく、被災地全体で母子家庭や父子家庭、里親家庭への支援は皆無である。さらに父子家庭の状況はもっと深刻である。陸前高田の災害遺児は179人で岩手県の中で一番多い。
【仮設住宅内での生活に対しての支援体制】
大船渡や大槌では、北上市が緊急雇用対策で雇用した支援員を、仮設住民30世帯に対し1名派遣され、仮設住民に対し、さまざまな支援を行っている。
陸前高田市では、社協の生活支援員が独居の高齢者の見守り活動をしているが、情報を提供したり、生活の相談にのったりといった支援は対象外とのことで、住民の相談窓口がなく、支援が充実しているとは言えない。
事業概要
陸前高田の仮設住宅の自治会長たちが中心となり発足した『陸前高田市仮設住宅連絡会』の支援チームの支援員として、地元住民を雇用・育成し、住民主体の支援を行う。また、支援員同士が共有できる仕組み(課題を解決するためのデータベース)をつくり、情報弱者への復興計画や生活再建等の情報共有支援、母子家庭や父子家庭、里親家庭への支援、住民の仮設での生活や生活再建に関する相談窓口開設、コミュニティ形成支援、離散した被災者同士の交流支援、復興に向けた体制・ネットワークつくり等、被災した行政ではやり切れない住民への寄り添い型支援を行う。本来、このような事業は行政が行うべきものかもしれないが、これを民間が行うことで、様々なことに柔軟な対応が可能となることも多く、民間が行うことの意義は大きい。
具体的な事業内容
各地区の仮設住宅連絡会への支援
住民に情報を提供することでITリテラシーの格差等による情報の隔たりを是正する。
相談窓口事業
住民同士のコミュニティ形成のサポートをする。
支援ニーズや情報を支援団体や行政、社協等と共有し支援の連携を図る。
離散した被災者同士の交流の支援
母子家庭、父子家庭、里親家庭への支援